八ヶ岳の山岳信仰の中心だったのは権現岳。
その権現岳の山頂直下には、
八雷神・磐長姫(イワナガヒメ)を祭神とする檜峰神社の石祠があります。
この祠の正面、磐長姫が見つめるその先には、富士山があります。
そして富士山の山頂にある、富士山頂上浅間大社奥宮に祀られているのが、
木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)。
ご存知の方も少なくないけど多くもないと思いますが、
イワナガヒメとコノハナサクヤヒメの二人は姉妹です。
富士山と権現岳で互いに見つめ合う姉妹。
この手の話に詳しいわけではないので含蓄のある話はできない代わりに、
遊び心からGoogleマップに権現岳〜富士山のレイラインを引いてみて、
なんとなく地図を眺めていたんです。
地図を拡大してスクロールしながらライン上を眺めていると、
ちょうどレイライン上に神社がありました。
それが「山神社」です。祭神は大山祇神(オオヤマヅミ)。
位置関係は下の図の通り。
中間点よりはやや権現岳寄りの場所にあります。
実は山神社自体は各地にたくさんありまして、
ウィキペディアによると全国に3,000社ほどあるとのこと。
祭神の大山祇命は山の神様とされていて、
大山祇神社というのも伊予国一宮を筆頭に全国に800社以上あるのですが、
山神社はその分社だったり、境内社だったりと小規模なものがほとんどだそう。
つまりメインを張れるような大きな山神社はほぼ無いわけです。
この韮崎にある山神社も、氏子戸数が九十戸と非常に小規模な神社です。
そんな中、なぜこの山神社に興味を持ったのか。
もちろん、権現岳〜富士山のレイライン上にある神社、
という理由もありますが、鋭い方はお気づきのとおり。
そう、
イワナガヒメ(姉)とコノハナサクヤヒメ(妹)の
父にあたるのが、このオオヤマヅミなわけです。
すなわち、霊山に祀られる姉妹を結ぶ線上に、
父を祀る神社がある、というのは偶然ではないでしょう。
そんなこんなで、興味を持った山神社。
今日はちょうど、
大村美術館で開催されている「百寿記念-堀文子展」と、
アイメッセ山梨で開催されている「甲斐クラフトフェアー」に行く予定だったので、
その行程に山神社を組み込むことは造作もないでしょう。
ということで、気になっていた山神社に参拝してきましたよ。
Googleマップのカーナビに迷わされながらも、無事到着。
しばらく人手が入っておらず、荒れた印象です。
大山祇神の文字がありました。
刻まれた文字を見ると「文化三年」とあります。
西暦でいうと1806年ですから、
いまから200年以上前、江戸後期ですね。
石造りの長い参道を登っていきます。
ようやく建物が見えてきました。
お、神楽殿でしょうか。なかなか立派です。
神楽殿に隣接するように、社務所がありました。
ずいぶん前から無人になっている風情です。
パイプ椅子も年季が入っています。
この神楽殿は、江戸期に建てられてものでしょうか。
参拝殿。真ん中の文字が不明瞭ですが、たぶん。
奥には現代のキッチンが置かれています。
例祭の写真が飾られています。
日付は’96とありますので、22年ほど前ですね。
山神社の例祭は4月17日のようです。
平成25年の例祭の様子が「諏訪大社と諏訪神社」のサイトに掲載されています。
いまはひっそりと静まり返っていますが、
年に一度、このような賑わいを見せるのですね。
こちらの奉納は文化八年とあります。
やはり、最盛期は江戸後期だったのかもしれません。
目をつぶると、当時の賑わいが思い浮かぶような気がします。
こちらの石碑には、山神社の由来が書かれています。
慶雲元年(704)に西山大笹池平という地より龍王新町赤坂に鎮座。
その後、神亀元年(724)に神託がありこちらに鎮座(遷座)したとあります。
奈良時代の当時、正確にレイライン上の当地を神託によって導くとは。
神楽殿を下から見上げた様子。
神楽殿を左手にすすむと、その先に拝殿があります。
静けさの中に漂う不思議な空気感。
天然木をそのまま組み合わせたような鳥居があります。
こちらは社務所跡でしょうか。
こちらが拝殿です。
大きな天狗の面と、一本歯の下駄が置かれています。
古い鉄製のおみくじが吊るされていました。
拝殿の裏に狛犬という珍しい配置。
本殿はなく、四本の木柱で枠組みが組まれています。
「お腰掛」というようです。
そんなお腰掛の後ろには、大きな鉄製の剣が祀られています。
文化10年(1813年)に奉納された狛犬は、なんともユニークな顔立ち。
こちらは「吽」。
ゲジゲジ眉毛にちょっぴり人をおちょくったような表情の「阿」。
「大山津見神」とあった剣。「大」「見」が抜けています。
大局を見ることができない、いまの日本を象徴するかのようです。
天狗の面はかなりの大きさがあります。鼻が無いようです。
あ、鼻がありました。
すっかり堪能し、神楽殿まで戻ってきました。
目をつぶり、ふたたび当時の賑わいに思いを馳せます。
神楽殿の鬼瓦には団扇の紋、その下には武田菱も見られます。
富士山と権現岳のレイライン上にある山神社、
とても不思議な感覚を覚える神社でした。
みなさんもお近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。
山神社
鎮座地:山梨県韮崎市穂坂町上今井2234