レシピ集ではなく、どちらかというと読み物ですね。
もちろん、レシピものっているのですが。
そして、料理の基本は「呼吸」にあるというのが、
本書の要となっています。
武道やヨガなどを嗜む向きには呼吸の大切さが、
身を持って理解ができていると思うのですが、
これを料理にもあてはめていると考えると、
分かりやすいと思います。
つまり料理における、呼吸法の指南です。
まず共感をしたのが、「調味料は5つで充分」という点です。
5つというのは基本の調味料のさしすせそ、
さ=砂糖、し=塩、す=酢、せ=醤油、そ=味噌、
の5つうち、砂糖の代わりにみりんを用いた5つである。
「みしすせそ」ですね。
そして、「ふだんの料理に砂糖はいらない」と言い切っている。
書籍はAmazon買いが日常の私ですが、書店を彷徨くのは大好きで、
最近のお気に入りは、蔦屋代官山店です。
ここは文句なくオススメですね。
永らく池袋ジュンク堂派であった私にとって、
いかにもオシャレな蔦屋代官山を推すのは憚られるのですが、
いずれにしても書店は楽しいですよね。
話がそれてしまいましたが、
その蔦屋代官山店で本書をパラパラめくっていると、この、
「ふだんの料理に砂糖はいらない」という項目が目に入ったのです。
高度に精製されたいわゆる白砂糖は猛毒といっても過言ではない、
というのは本屋を彷徨い歩くのが好きな向きであれば、
常識としてすでに持ち合わせているとは思います。
しかし料理本において砂糖を真っ向から排除するという趣のものは、
なかなかお目にかかれないものです。
そんなことから、思わずカゴに入れてしまった次第です。
筆者はビーガンレストランで腕をふるっていた経験もあり、
いわゆる料理に対する思想というか、哲学というか、
そんな中の要素の柱として、この「呼吸」を取り入れています。
例えば葉野菜を湯がく時に、これを引き上げるタイミングを、
呼吸の深さではかるというものです。
この能力を鍛えていくと、時間のかかる大根なども、
美味しいタイミングであげられると著者はいいます。
また応用として、たとえばスーバーで食材を選ぶときにこの
「呼吸」にきいてみる、といったものがあります。
これは「直感」を肉体的変化として最も分かりやすく捉える方法として、
「呼吸」という手段を活用している、と言えるかもしれません。
レシピとしては、野菜の旨味を引き出すビーガン料理が紹介されており、
写真からもその美味しさが伝わってきます。
私自身は肉も魚も食べる(最近は肉は減ってますが)雑食派です。
ビーガン料理も好きだし、旬の野菜の持つ生命力溢れる料理は、
肉料理を軽く凌駕する満足感を得られることを実感しています。
玉ねぎをじっくりと蒸して甘みを引き出して作る味噌汁などは、
出汁を一切加えないレシピながら絶対に旨いだろうなぁと、
想像ができるものです。
いわゆるレシピ本としての活用ではなく、
読むことによって料理に対する姿勢というか、
考え方の幅を広げることのできる一冊です。